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音声アシスト×AI(人工知能)―革命的新機能実装の舞台裏―(第3回未来を作る男編)

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話しかけると声で答えるボイスエージェントアプリ・音声アシスト。その音声アシストでは、雑談bot機能が3月にリリースされました。AI(人工知能)を用いたこの機能は、どのように開発されているのでしょうか......?

そこでYahoo!検索ガイドでは、音声アシストの応答を考える「シナリオライター」が音声アシストの舞台裏を描いた「雑談bot機能開発ストーリー」を全3回で掲載します。

第1回第2回に続き、今回は最終回をお届けします。


Yahoo! JAPANの紀尾井町オフィスのコンセプトのひとつが、"グッドコンディション"だ。社員食堂の"BASE"や"CAMP"は、ヘルシーなメニューが充実している。

サイエンス系の仕事をやりたい人間には、ここは恵まれた環境だ――。

ボイスエージェントアプリ"音声アシスト"の雑談bot機能がついに3月中旬にサービスがリリースされた。僕自身の感覚としては、音声アシストが随分と成長したなという印象があった。以前は答えられなかった問いかけに応じるようになったのだ。

一週間ほどたってから、菅原をBASEに誘って、導入後の結果をどう捉えたのかを聞いた。社員はさまざまなタイプのPCを選べるが、菅原も丹羽と同様にMacBookProの15インチを愛用している。その大型のモニターを睨(にら)み付け、菅原は腕を組んだ。

「おおむね想定通りでした。判定不能と処理されるものが減って、ユーザー一人当たりの平均発話数が伸びたのはポジティブな結果です。ただ、KPIのDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)がリリース後に際立った変化がなかったことはちょっと残念です。もっと伸びて欲しい」

実際、ユーザーに対して、雑談botを実装した告知などは一切していないので仕方ない部分はあるのかもしれない。だが、応答精度が上がったことで見えてくる課題もあるはずだ。


菅原は、"ソフトウェア開発技術者""データベーススペシャリスト""セキュリティスペシャリスト"に加え"色彩検定"資格も持つマルチスペシャリストだ。

「例えば発話の中に"雑談"と、"要求"が混在するケースでは現状対応できません。とても難易度は高いですが、自然な応答という意味では、雑談対応しつつ、課題解決の処理をすることが理想です。今後、それを柔軟にできるように変えていきたいですね」

確かに、究極は人間の応答に近いものに、あるいは、それを超えるものにしたい。

「さらに、アクションができないため応答としてつまらないものになっている傾向があります。例えば"遊びましょう"と言われても"いいですよ。何して遊びますか?"の様な応答はできません。今の仕組みでは"しりとり"と言ってくれれば"しりとりができます"と返すのが限界です。今後は雑談として返答して面白い領域も考える必要があります」

僕は、つい菅原から目をそらして、宙を見つめた。"面白い領域"というのは自分に課されてくるテーマなのだろう。限られたリソースで何をどこまでやれるのか、誰よりも脳に汗をかいていかなければならない。ここは準備不足なので話を逸らす方がよさそうだ。菅原に、Yahoo! JAPANで働くやりがいを聞いてみた。

「そうですね。大勢のユーザー、ビッグデータやそれを扱う仕組み、さらにはチェックを行う体制が整っているところです。データサイエンス系の仕事をやりたい技術者にはとても恵まれた環境なんですよ。利用者視点で疑問に思ったことは、すぐ社内で調べられますしね」

自然言語処理の知見や技術があれば引く手あまたに思える。僕が他の会社には目移りしないのかを聞くと、菅原は少しはにかんだ。

「Yahoo! JAPANは、研究所とエンジニアが混ざって行う論文読み会や最新の研究内容を共有するセミナーがあって、エンジニアでも研究を続けられる環境があるんです。海外のトップカンファレンスなどでも、仕事に生かせる場合はどんどん参加を推奨する方針です。なので、自分としてはとても居心地がいいんですよ。それに"社会人ドクター進学支援制度"もあって、やる気があれば働きながらドクターを取ることだってできます」


「組織の潜在能力を発揮させて、ユーザーを感動させるようなプロダクトをどんどん生み出していきたい」と語る丹羽。

ユーザーに対して新しい世界観を見せていけなければ、活路はない――。

丹羽から、"雑談bot"の取り組みを記事にするよう依頼を受けていた僕が、いくつか質問メールを投げると、近くの芝生に案内された。オフィスの各フロアに人工芝のフリースペースがあり、丹羽はミーティングの際、芝生の上を好む。「話しながら整理したいので、長くなるかもしれません」といわれたので、僕はiPhoneを取り出し、ボイスメモのボタンを押した。

すると、丹羽はまずAIがもたらす未来について冒頭の通り、「AIは人の幸せや社会の豊かさのために活用されるべきだ――」と、語ってくれたのだ。僕がYahoo! JAPANに魅かれた理由のひとつが丹羽の想いと共通する企業理念やCSRに対する共感だった。

「この取り組みは必ず次につながっていきます。今、社内のさまざまなサービスで、雑談 botのニーズがあるんです。今回作ったプラットフォームは汎用性の高いシステムですから」

すでに音声アシストはiOS版の提供を終え、Android端末のみに提供するサービスになっている。そう考えれば、この技術は次に生かされるべきものであるはずだ。先を読むことが難しい時代、サービスにはどんな視点が求められているのだろうか。

「すでに、最先端技術の開発競争は"プロダクトアウト"的になってきています。ユーザーのニーズばかり追いかけていては乗り遅れてしまう。プロダクトやサービスをいち早く届けるには、ユーザーに対して"こういうことができますよ"と気づかせることやフィードバックをもらって、スピーディーにトライを繰り返すことが重要になってくる。イニシアチブを取って、新しい世界観を見せていくことができなければ、われわれだって淘汰(とうた)されてしまう」

険しい表情を浮かべていた丹羽が、姿勢を崩して、人工芝を両手でなでた。


紀尾井町オフィスの各フロアにある芝生の上では、文字通り、ひざを突き合わせたミーティングが日々開催されている。自由にレイアウト変更が可能なコンセプトは"ハッカブル"

「検索の歴史はわずか20年ばかりなんです。物事を調べるときに、頭のなかでいくつかのキーワードに変換するという作業は、かつて誰も想像できないものだったでしょう。いつの間にか、みんながネットで"検索窓"を器用に使うようになっているんです。僕は、"検索脳"って呼んでいるんですけどね。この先の10年で、また人々が見ている世界は一変するでしょう。AIがひとつのエポック・メイキングとなりうる――」

予定していたヒアリング内容に目処(めど)がついて、僕がiPhoneの録音時間に目をやった時には、既に三時間を回ろうとしていた。丹羽が去った芝生の上で、NexusでYahoo! JAPANのトップページを開くと、"検索窓"に目が吸い寄せられた。

丹羽の言う"検索脳"で求人を探していた僕は、偶然、Yahoo! JAPANにあがっていた現在のポジション(音声アシストのシナリオライター)に出会ったのだ。この"検索窓"で、あらゆる情報に辿(たど)り着くことが可能で、人の人生さえも変えてしまう時代だ。

第一線で奮闘するIT技術者が、この"検索窓"の向こうにどんな未来を描くのか。

検索では拾えない言葉を紡いで物語にすることは、次の時代を描くことになるのだろう。きっと、特殊なキャリアを歩んできた自分が果たせる役割もあるはずだ。

僕は、芝生から立ち上がり大きく伸びをした。Nexusで"食べログ"を開こうとしたが、音声アシストを立ち上げ、「おなかぺこぺこだから、近くのおいしいつけ麺屋を教えて」と吹き込んだ。すぐに連動している"Yahoo!ロコ"で近所の店の一覧が出てきた。

ふと、菅原の言葉が脳裏を過ぎる。自分はたったいま、雑談と要求が混在した発話をした。「今日もお仕事お疲れさまでした。最近、カロリーを取り過ぎなので、ヘルシーメニューを食べられる定食屋をご案内します」なんて応答がもし返ってきたらすごいな......。

時間はかかるだろうが、きっと菅原ならやってくれるはずだ。時計に目をやると、19時25分だった。BASEでは19時半まで夕食が提供されるので、急げばまだ間に合う。僕は帰り支度を整えて、階段を駆け上がった。

"AI作家"は御免だが、AIが搭載された執筆サポートシステムは欲しいな――。

(検索の未来へ、つづく)

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