ちなみに31歳独身男性というのは僕のことです。
それはともかく芸術の秋ですよみなさん!
ゲイジュツのーーアーキー!! (通行人を松たけでしばきながら)
まあ「芸術の秋」とかいってテンション上げたところで、中学生のころ美術の時間に、真剣に描いた友人の似顔絵を先生から「真面目にやれ」と怒られたエピソードを持つ僕には、何の関係もないことなんですがね......。
絵心がみじんも感じられないことでおなじみの僕が描いた作品:「怒るヤンキー」
芸術センス、皆無
描いた絵を見れば一目瞭然。僕の芸術的センスが皆無であることは、ご理解いただけたかと思います。
そんなわけで「ええねん......。僕には芸術がわからなくてもええねん......。僕にはインターネットがあるさかい......」と、暗い部屋でディスプレイの明かりを頼りにキーボードをたたく日々を送っていたのですが、アニメ調のフィギュアがン億円で売れただとか、ジャクソン・ポロックという作家が描いた、(失礼ながら)素人目には落書きにしか見えない絵が200億円だとか、近ごろはネット上でも現代アートに関する話題が増えてきました。
「ジャクソン・ポロック」で画像検索。どう見ても落書きにしか見えない
他にも、画像検索で「現代アート」を検索してみると、わけのわからないものがたくさん出てきます。
「現代アート」で検索。うーん、やっぱり全然わからん
というか、これがアートなら僕でもできるんじゃないの!?
ひょっとしたら、僕でも一発当てて、億万長者になれるんじゃないの!?
と、いうわけで!! 今回の調査は「31歳無職が現代アートに挑戦!」です! ウヒョー! お金欲しい!
とはいっても、現代アートに関する知識がないため、まずは情報収集の為に現代アートに詳しい人を探してみました。
Twitterで呼びかけ
さっそく、Twitterで詳しそうな人を探してみると......
渋家の齋藤桂太さんが釣れたー!!
......ん? 渋家? いったいどんなものなんだろう?
さっそく「渋家」をYahoo!検索で調査だーーー!
いろいろ出てきたぞ!
渋家...「家」をモチーフにアートを表現するという活動を5年ほど前から実施。現在は渋谷にあるシェアハウス。アート作品として、家全体をロゴ付きの白い布で覆ったら、大家さんに怒られて引っ越しを余儀なくされたり、一つ屋根の下における男女の共同生活にあらぬ疑惑を立てられネット上でめちゃくちゃたたかれたり、最近も男女3人ずつ計6人の見知らぬ男女が1つ屋根の下で共同生活を送るテレビ番組「テラスハウス」(AKB48の北原里英が出演することで話題を呼んだ)に、渋家出身の女性が参加していることが判明して騒動になったりしたみたい。
怒られてばっかりだね!
白い布で覆われた渋家
渋家にお邪魔して、誰か紹介してもらおう
で、実際に僕がアート作品を作るのであれば、わけわかんないもの作っている人と対決したりしたら面白いよね、ということで齋藤さんにお願いしてみた。
本邦初公開、というわけでもない渋家内部。汚い
僕「というわけで僕がアート作品を作るので、それと対決する方をご紹介いただきたいのですが......。なるべくわけわかんないものを作っている人がいいです」
渋家元代表、齋藤桂太さん
齋藤さん「あ、それなら中島晴矢さんなんかがぴったりですね。元ここの住人でわけがわかんないものを作っているんで」
僕「おお! ぜひその方を紹介してください!!」
中島晴矢さんとご対面
わけがわかんないものを作っている人、中島晴矢さん
中島晴矢...法政大学・美学校・渋家を卒業。
2012年11月23日~25日 TRANS ARTS TOKYOに出品
僕「ちなみに、どういった作品を......?」
中島さん「これです」
中島さんの作品。透明な円錐(すい)状の物体に、ギアが4つ浮かべられている
僕「なるほど。確かにわけがわかんないですね」
中島さん「横光利一という小説家がいるんですが、その小説家の『機械』という小説を図示して立体化したら、こうなるんですよ」
僕「あー、そういうことですね。中島さんは文学をモチーフにした作品をたくさん作っていますもんね」
中島さん「ええ。現代アートは概念が大事なんですよ。何がどうしたからこうなった、っていう道筋ですね」
僕「すみません、僕そういうの全然わかんないんです......! どうやって作品を作ろう......」
中島さん「あ、じゃあ、芸術公民館、という会田誠さんがやっているバーが新宿にあるので、一度遊びに行ってみてはどうでしょう。アートに興味がある人や現役の作家が遊びに来ているので、いろいろと話を聞いてみると面白いと思いますよ」
僕「会田誠さんのバー!?」
会田誠...日本を代表する芸術家の一人。
ミヅマアートギャラリーでの個展を中心に国内外の展覧会に多数参加。
2012年11月17日より、森美術館で会田誠展:天才でごめんなさいを開催予定。
最近何かと世間を騒がせているアート集団:chim↑pom(チンポム)の師匠筋に当たる。
試しに動画検索で「会田誠」と入れてみたら、インタビューやプレゼンの動画がたくさん出てくるぞー!
大物だー!
僕「おお! アートにうとい僕でも、名前は知っていますよ! そこへ行けば会田誠さんに会えるんですか?」
中島さん「いや、個展が近くて、今は相当忙しいと思います。会うのは難しいでしょうね......」
僕「そうか......。まあでも、行ってアートな人たちと話したら、なにかインスピレーションが得られるかもしれないですね......。行ってみます!」
段々わらしべ長者みたいになってきた
そんなわけで齋藤さんから紹介された中島さんの紹介で、「芸術公民館」なるバーに行ってみることに。
場所は、新宿歌舞伎町。趣のある路地を入った所に芸術公民館があります。
趣のある路地。いきなり脇腹を刺されそうな雰囲気
そしてこれが、芸術公民館の内部
めっちゃゴチャゴチャしとる。渋家といい、アートな人たちは部屋をゴチャゴチャにする傾向でもあるのでしょうか......。そういう意味では、僕もアートの素質があるのかも知れない。
汚さには定評がある僕の部屋
アートなバーでアート談義
そんなわけで、僕を出迎えてくれたのは富永さんという本日の担当の方(芸術公民館はその日の店番が当番制)。記事の趣旨を説明して、快く取材を受けていただきました。ちなみに、富永さんにもヒゲが生えていたので、最初は会田誠さん本人かと思ったのは内緒の話......。
僕「というわけで、中島さんにご紹介をいただいて取材に参った次第であります」
富永さん「なるほどねぇ...。でも、どうせなら会田さんとも会えたらいいよねぇ......」
僕「いやー、もちろん会田さんに出ていただけたら、すごくうれしいんです。しかし、個展を控えていてめちゃくちゃ忙しいっていう話をうかがったので、ちょっと難しいのかなぁと......」
富永さん「じゃあ電話してみるよ。今の時間なら、たぶん大丈夫だから」
僕「え!」
富永さん「あ、もしもしー。富永です。今芸術公民館にヨッピーさんというライターさんが来ていて。ええ。ちょっと代わりますねー」
ええええ!? ちょ、そんな気軽でいいの!?
僕「あ......もしもし?」
「どうも。会田です」
ギャー! 会田誠さん本人やーー!
僕「わー、お忙しいところすみません! 実はかくかくしかじかで、取材の申し込みをしたいのですが......」
会田さん「うーん。今個展の準備があって、ちょっとまとまった時間が取れなくて......」
僕「いえいえ! お時間は取らせませんので......! 僕がアート作品を一点作りますので、その作品について一言コメントをいただければ、万事オッケーであります!」
会田さん「なるほど。それぐらいでもよければ大丈夫です」
アポイント成立!
わー! 齋藤さんに紹介してもらった中島さんに、芸術公民館を紹介してもらって、そこから会田誠さんとのアポイントが取れてしまった! どうしよう! 完全にわらしべ長者みたいになってる!
勢いで言ってみたのはいいけれど、僕、本当に会田誠さんに作品を見せに行くの......?
「テメー! なめた作品持って来んじゃねーよ! ふざけんな!」って殴られるんじゃあ......? ギャー!
そんなわけで現代アート作品を作ろう
とにかく、アポイントも取ってしまったので、作品の制作に取り掛かります。
秋葉原で調達したフィギュア。大人の事情でモザイクがかかっております
まずは、制服の女子高生フィギュアを秋葉原で調達。本当はフィギュアも自分で作るべきなのかもしれませんが、スキルが皆無なため、有りものを活用。
そして、次に用意したのがプランターと土
デパートのガーデニングコーナーで、安く買えました。
さらに、制服に着替えてインスタントカメラで激写
それらを慎重に組み合わせると......
作品名:「少年時代」
ちなみに、足の間から写真を見るとこうなる
いかがでしょうか。
秋風のいたずらに一喜一憂した、少年時代の甘酸っぱい思い出を具現化した力作です。
......え? 何これ。
自分で作っておいていうのもアレですが、こんなもん会田誠さんに見せて本当に大丈夫なんですか僕。なんか、社会的に抹殺されたりしませんか?
最悪、「お前アートなめてんのか!」って殴られる可能性もあると思います。まあ、殴られるくらいで済むならいいか......(ポジティブ)。
あとあと対決することになるであろう、僕の作品と中島さんの作品を並べた図
会田さんに見せに行こう
というわけで、会田さんのアトリエの最寄駅であるみなとみらいへ
マジで緊張して気が気ではありませんでしたが、心を奮い立たせて地図アプリを片手に会田さんのアトリエに向かう。
会田さんが間借りしている「ハンマーへッドスタジオ」の外観
つーか、めちゃくちゃ警備が厳重そう!
このスタジオには、そうそうたるメンツの現代美術家さんたちが入居しているようですし、価値が高い作品もたくさんあるのでしょう。やはり、警備も厳重にせざるを得ないのかしら......。やべー! こわい!
取り急ぎ、会田さんの携帯電話へ連絡を入れ、しばし待機。
そして、いよいよ会田さん本人がご登場!
チャリンコで
えー! 自転車!?
会田さん「どうもどうも。この中って広いんで、なるべくタイヤが付いている乗り物で移動しています」
なんて言いながら、キックボードに乗り換えて軽やかに建物内を移動する会田さん。
スタジオの中はめちゃめちゃ広い
次の個展に向けて、制作途中の作品を見せてくれる会田さん
僕「これ、未発表の作品なんだったら、さすがに写真を撮るのはまずいですよね?」
会田さん「いや、別にいいですよ」
マジかよ!
いよいよ作品の披露
僕「では早速ですが、今回作った作品を見ていただきたいのですが......」
会田さん「はい。ぜひ」
今思えば、人生初めて作ったアート作品(?)を初めて見せる相手が、会田誠さんっていうのもすごくないですか。しかも見せるのってコレですよ。
コレ
固まる会田さん
シュールな光景
僕「一応、作品名は『少年時代』でして、思春期の少年の甘酸っぱい記憶を具現化させた作品になります......」
会田さん「なるほど......」
僕「これ、アートって呼んでもいいものですかね」
会田さん「いや、これは立派なアートですよ。この写真はチェキで撮ったものですか?」
僕「はい......」
会田さん「なるほど。いいですね。いや、こういう、既製の製品を組み合わせて作るレディメイドっていうアートのジャンルもあります。どうせやるならこういう感じに、徹底して手を加えない、やっつけっぽい方がいいと思いますよ」
僕「レディメイド......?」
「レディメイド アート」で検索
なるほど。既製の製品を組み合わせたりして、アート作品としてとらえることをそう呼ぶのか......。
僕「おお! じゃあ本当に、アート作品って言っても問題ないですかね......?」
会田さん「はい。問題ないですよ。この、本来二次元であるアニメを三次元化したフィギュアと、本来三次元である人間を二次元化した写真。そして土っていう自然のものを組み合わせた捻れた構図は、ビギナーズラックなのかなんなのかはわかりませんが、面白いと思います」
やったー! 殴られずに済んだぞーーー!!
僕「いやー、僕はアートとか全然詳しくないですし、会田さんみたいな芸術家の方にこんなもん見せたら怒られるんじゃないかと、ヒヤヒヤしていました」
会田さん「いえ、別に芸術家が偉いだとかそういうものでもないですからね。芸術家なんて、失敗してもいいから新しいことにチャレンジする、時代を駆け抜けるチンピラの鉄砲玉みたいなもんです」
僕「おお......! そのチンピラの鉄砲玉っていう表現、カッコイイですね......!」
ビールを片手に語る会田さん
会田さん「村上隆さんみたいに、作品がン億円で売れるような人なんて本当にごく一部ですよ。僕も会社でいえば係長ぐらいの年収ですし、まあなんとか家族が食べていけるくらいはできているかな、って程度です。それすらも1000人に1人っていうレベルですかね。鉄砲玉で生き残るのは」
僕「その、生き残る生き残らないをわけるポイントってなんなんですかね? やっぱり学生時代から飛び抜けてうまいとか?」
会田さん「うーん。学生のころって、たとえばデッサンのうまい下手っていうのはやっぱりあるんだけれど、その辺はあんまり関係ないと思います。それよりも執念というか、あきらめない姿勢だったり、本人のキャラクターだったりが大きな要素なんじゃないかな。絵のうまさでいうのなら、漫画家さんの方が大きなウェイトを占めるんじゃないですかね」
この後も、忙しい時間をぬっていろいろとアートについて教えていただき、大変有意義な時間を過ごせました! ほんま、会田さんの懐の深さは古今東西を駆け巡るでぇ......! ご協力、ありがとうございました!
いよいよ、対決
渋谷にやって参りました
そんなこんなで会田誠さんからお墨付き(?)もいただいたことですし、今度は実際に私が作った作品と、中島晴矢さんからお借りした作品を対決させてみましょう。
ルール
通行人に2作品を見比べてもらい、直感で好きな方を選んでもらう。10人に聞いて、得票が多かった方の勝ち。
はたして、ド素人アートは勝てるのだろうか......?
通行人に、どんどん判定していただく
果たして、結果は...?
ヨッピー3票
中島さん6票
1引き分け!
ギャーー!! 負けたーーーー!!!!
内訳はこうです。
31歳男性 引き分け
高校一年生女子2人組 両方中島さん
70歳男性 中島さん
19歳男性 中島さん
26歳男性 ヨッピー
24歳女性 中島さん
21歳女性 中島さん
15歳中学生男子2人組 両方ヨッピー
ちなみに、女性陣は全然写真を撮らせてくれませんでした。
えーーーー!! 悔しィィィィイイ!!
「渋谷の連中はアートを理解してない」と駄々をこねだす僕
アートな人にも見てもらおう
「アートな人には、きっと僕の作品のよさが理解できるはず」「"本物"の人にしか、僕の作品は理解されない。この価値がわからない連中なんかには理解してもらわなくたっていい」と、中二病みたいなことを言ってゴネていると、同行のカメラマンから一つの提案がありました。
「それなら、東京藝術大学の学生さんに見てもらえばいいんじゃないですか?」
僕「......東京藝術大学? 何それ?」
さっそく「東京藝術大学」を検索じゃー!
東京藝術大学...日本にある唯一の国立美術大学。「東大より入るのが難しい」といわれるほど入試のハードルが高く、著名な芸術家をたくさん輩出している。会田誠さんや村上隆さんもここの出身。
なるほど。ここの学生さんなら僕の作品を理解してくれるかもしれない......!
東京藝術大学前に移動
立派な門の前
さっそく学生さんに聞いてみる
僕「かくかくしかじかで......、この作品は少年時代の甘酸っぱい感覚と、ノスタルジーを湧き起こさせるような作品になってまして......」
女性「あ、じゃあこっち(ヨッピーの作品)で」
やったぁぁああああああ!! やっぱりアートな人は、僕の作品を理解してくれるんだーーーー!!
カメラマン「え? ちょっとそれずるくないですか? 解説しちゃうのは不公平ですよ」
うるせえ! ようは勝てばいいんだよ!!
続く学生さんも僕の作品を選択
アートが理解されてご満悦の僕
僕「よし、やめよう」
カメラマン「え!? やめるんですか!? まだ2人しか聞いていませんよ!?」
僕「うるせえ! 続けて逆転されたらどうすんの! もう十分だよ! 十分!」
カメラマン「えー! 10人に聞かないとそれこそ不公平じゃないですか!」
僕「いいんだよ! 勝ち逃げで!」
カメラマン「......」
「美的センス皆無の31歳独身男性でも現代アートは作れるのか大調査!」の調査結果
そんなわけで、美的センス皆無の僕が現代アートに挑戦してみたのですが、いかがだったでしょうか? 対決部分の茶番は置いておいても、アートを身近に感じられるようになったのではないかと思います。芸術の秋ということで、そこかしこで展示会や個展が開かれていますし、みなさんもこの秋はアートに触れてみてはいかがでしょう? Yahoo!検索を活用すれば、展示会情報もたくさん出てくるよー!
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